発達障害のキソ知識〜ASD編⑧〜
- サポート教室かたつむり
- 2021年12月27日
- 読了時間: 6分

「発達障害」
よく耳にするけれど、何となくしかわからない・・・
という方もいらっしゃるのではないでしょうか?
知っているようで知らない?身近な障害「発達障害」について、一緒に学んでみませんか?

「発達障害」とは、生まれつき脳のはたらき方が通常と違うために、幼少時から特異な行動や特徴が見られる状態のことです。
主に
・ASD(自閉スペクトラム症)
・ADHD(注意欠如多動症)
・SLD(限局性学習症)
の3つを指すことが多いですが、他にも、
・DCD(発達性協調運動障害)
・チック障害
を含むこともあります。
今回は、これらのうち、ASD(自閉スペクトラム症)について紹介していきます!
*今までの投稿まとめ*
<概要>
ASD(自閉スペクトラム症)とは、生まれつきの脳の機能障害で、発達障害の一つです。発症の原因はまだわかっていませんが、遺伝や環境など、多数の要因が複雑に絡み合って発症すると考えられています。
<症状>
ASDは、「コミュニケーションの難しさ」「こだわり」「感覚のかたより」など、多様な症状を見せます。症状の現れ方は十人十色で、同じ症状の人は二人としていないともいえるでしょう。
<歴史>
ASDは1943年のカナーの報告、1944年のアスペルガーの報告以来、いろいろな角度から研究されてきました。近年では、ASD関連の疾患を細かく分類するのではなく、「自閉スペクトラム症(ASD)」とまとめて呼ぶことが多くなってきました。
<ASDかもと思ったら?>
・相談する
園や学校の先生・公的相談機関・かかりつけ病院・専門病院 など
・今できることをする
情報をまとめる・かかわり方を変える など
<ASD支援の基本:SPELLの原則>
ASD支援では、次のことを大切に考えます。
・Structure(構造化する)
・Positive(肯定的に)
・Empathy(共感する)
・Low arousal(穏やかに)
・Links(つながる)
<ASDの支援方法:TEACCH>
TEACCHでは、ASD児者の行動を文化として捉え、ASD児者が適応し、自立し、QOLを上げられるように、次のような手法で支援します。
・物理的構造化
・個別のスケジュール化
・ワークシステム
・視覚的構造化
<ASDの支援方法:ABA>
ABA(応用行動分析)とは、人間の行動を分析し、そこでわかったことを実際の問題に応用していく方法のことです。ABAでは、行動を個人と環境の相互作用によって生まれるものと考え、行動がなんのために起こるのか、その目的に注目します。
ある行動について、環境の影響や目的を分析するためには、ABC分析という枠組みを使って行動を整理します。
今回は、ABAの具体的な方法についてご紹介します!
まずは、前回ご紹介したABC分析について、おさらいです♪

例えば、「スーパーでお菓子をねだって泣く」という行動の場合は、このようになります。
・A(きっかけ) ・・・スーパーに行く
・B(対象者の行動) ・・・泣く
・C(行動の結果) ・・・お菓子が買ってもらえる
こうやって整理することで、
・環境の影響・・・スーパーでお菓子を目にする
・行動の目的・・・要求(お菓子がほしい)を叶える
がわかりやすくなるのです。
さて、それでは、行動を変えていく方法について考えていきましょう。
行動は、以前した行動で得られた結果によって変わります。
例えば、「お手伝い」を例として考えてみましょう。

この場合、行動によって良い結果(ほめられる)が得られたため、次からも同じ行動をとりやすくなります。この仕組みを「強化」と呼びます。
A お母さんがご飯を作っているとき(きっかけ)
B お手伝いをしたら(行動)
C ほめられた(良い結果)
↓
またやろう!!(行動が増える)
ということですね。
では、この場合はどうでしょう?

この場合、行動によって良い結果(ほめられる)が得られなかったため、次からは同じ行動をとりにくくなります。この仕組みを「消去」と呼びます。
A お母さんがご飯を作っているとき(きっかけ)
B お手伝いをしたら(行動)
C ほめられなかった(良い結果なし)
↓
もうしない・・・(行動が減る)
ということですね。
では、この場合はどうでしょう?

この場合、行動によって悪い結果(叱られた)が得られたため、次からは同じ行動をとりにくくなります。この仕組みを「罰」と呼びます。
A お母さんがご飯を作っているとき(きっかけ)
B お手伝いをしたら(行動)
C 叱られた(悪い結果)
↓
もうしない・・・(行動が減る)
ということですね。
これらの仕組みを実際の支援で生かしていくときには、次の2点から考えていきます。
① 行動の「きっかけ」にアプローチする
② 行動の「結果」にアプローチする
それでは、具体例を見てみましょう。
<良い行動を増やしたいとき>
① 行動の「きっかけ」へのアプローチ
良い行動が起こりやすくなるような「きっかけ」をつくることで、良い行動を導きます。
例えば、「帰宅後の手洗い」という行動を増やしたいときには、
・「帰ったら何をするんだっけ?」「帰ったら手を洗おうか」などの声をかける
・玄関の目につきやすい位置に絵カードを貼る
・手が洗いたくなるようないい匂いのせっけんを用意する
・手が洗いやすいように踏み台を設置する
など、環境を整えたり、「きっかけ」となるものを提示したりします。
② 行動の「結果」へのアプローチ
次からも良い行動をしやすくするために、行動に対して「良い結果」を返します。
例えば、先ほどの「帰宅後の手洗い」で考えてみると、
・手を洗ったらほめる
・手を洗ったらカレンダーにシールを貼る
・手を洗ったらおやつの時間にする
など、本人にとって嬉しい「良い結果」が起きるようにします。
<問題行動を減らしたいとき>
① 行動の「きっかけ」へのアプローチ
問題行動が起きやすい「きっかけ」をなくすことで、問題行動を減らします。
例えば、「おやつの時間に弟と取り合いをする」という行動を減らしたいときには、
・おやつをまったく同じものにする
・おやつを別々の部屋で食べる
・自分でおやつを選ばせる
など、環境を整えたり、「きっかけ」となっている事象を変えたりします。
② 行動の「結果」へのアプローチ
次からは問題行動をしにくくするために、行動に対して悪い結果を返します。
例えば、先ほどの「おやつの取り合い」で考えてみると、
・おやつを取っても自分のものにならない(消去)
・おやつを取ったら叱られる(罰)
などが「悪い結果」として考えられます。
しかし、「悪い結果」を返すことで行動を減らそうとするアプローチには注意が必要です。消去を行うと、一時的に問題行動が増え、結果的にエスカレートさせてしまうことがあるからです。また、本来「罰」であるはずの「叱られる」ことが、本人にとって「注目してもらえる」という「良い結果」になってしまい、反対に行動が増えてしまうこともあるからです。
問題行動を減らすときには、環境調整など「きっかけ」へのアプローチや、問題行動の代わりとなる良い行動を増やすためのアプローチを中心に考えていくのがオススメです!
いかがでしたか?
ASDの支援方法について、SPELLの原則、TEACCH、ABAと解説してきました。ぜひ、日頃の支援やかかわりの中で、生かしてみてくださいね!
次回からはADHD編スタート!ぜひご覧ください☆
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